家づくりを機に「収納を何とかしたい」と思われる方、結構多いようです。 私達が伺う要望にも、必ず「できるだけ収納を多めに」とか 「壁面収納でスッキリ暮らしたい」というものがあります。 その裏には、現状の収納についての不満があり、 新築と同時にその問題点をスッキリ解消したいという思いがあるのでしょう。 ただ、この収納計画、「なるべく」とか「スッキリ!」といった 漠然とした要望のままでは解決しません。 現在の収納を見せてもらったり、リストを作ったりして、 じっくりと話を聞いて収納計画を具現化していきます。 それなのに、これだ!という解答がなかなか見つからない場合もあります。 建て主さんも「本当に大丈夫かしら?」という不安が拭えない。 そして、どうやらただ単に容量を増やしたり、 雑誌やカタログを真似た収納空間や家具を用意したりしても意味がないことに気づきます。
収納計画:その前に!
私自身、「しまうこと」が得意ではありません。 また、十人十色の「家づくり」の中で、 漠然としたところから具体的な「しまい方」を見つける手立てを整理したいと思い、 「家事塾」主宰の辰巳渚さんに師事し、家事セラピストになりました。
家事塾では「自分なりの秩序」を身につけることが大切だと言われます。
この「秩序」という言葉、建築においても重要なキーワードです。 建築とは、空間を秩序付けること。(ルロワ・グーランによると) 混沌と広がる宇宙の中で自分の周りに秩序を与えるために住居をつくったといいます。
モノと人との関係においても、モノがあふれ、混沌とした状態にあるのが現代なのでしょう。 逆に言えば、「モノと自分」との関係において 「自分なりの秩序」を見出せない状態が片付かない状態だとも言えるのかもしれません。
ここでの秩序とは、収納場所というハードだけでなく、 自分が「モノとどう付き合うか」というソフトが重要です。これが「暮らし方」です。

暮らしをみつめることから 家づくりは、自分たちの“これまで”と“これから”の「暮らし」を見つめるとてもいい機会です。 例えば、どういうモノを、どういうルールで、どの位持つのか。家族で話し合い、 家族での考え方をみんなで共有します。これが固まれば、どの場所に、どの位の収納容量が、 どのような形であるのが最適か、自ずとわかってくるでしょう。 そして、実際の生活でも家族みんなの協力が必要不可欠。 協力がなければ元の習慣に戻ってしまうし、片付け役になる人のストレスばかりが爆発してしまいます。 ゴミの出し方なども含めて、家族みんなが役割を共有しやすいように、 家づくりとあわせてまずは、ルール作りをしてみてください。 それから、実際の設計においては、作りこみすぎないこと。これが大切。 よく家電製品にあわせて収納棚を作ったら、モデルチェンジをした時に収納できなくて困った、 ということを聞きます。あまりに完璧に作ってしまうと、住みながらのアレンジもできないし、 ちょっと不便が出たときに(気分的に)破綻してしまいます。
家族での考え方やルールというソフトはしっかりと充実させ、 実際のハードはざっくりと。DIYでアレンジできるくらいの気楽な方がいいと思っています。
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